東京都千代田区の司法書士事務所です(市ヶ谷駅近く)。遺産相続・遺言作成・会社設立について、お客様を完全サポートいたします!
≪電話相談はこちら≫
受付時間 | 9:00~18:00(土日祭日を除く) |
|---|
司法書士が、専門用語をできるだけ使わずにお伝えします。
遺言書というと「資産家が作るもの」と思われがちですが、実際はむしろ逆です。不動産がある家庭ほど、遺言書の有無で相続手続きの難易度が大きく変わります。
相続は、仲が良い家族でも揉めることがあります。というより、手続きが進まないことで感情がこじれていくケースを、私たちは数多く見てきました。
遺言書の最大の価値は、誰かを"勝たせる"ことではありません。家族の負担を減らして、揉めにくい形に整えておくことです。この記事では、遺言書の種類選びから、不動産で失敗しない書き方まで、作成に必要な知識をひと通りまとめました。
遺言書がない場合、原則として相続人全員で「遺産分割協議」を行い、全員が合意しなければ先に進めません。不動産の名義変更も、銀行口座の解約も、株式や車の名義変更も、全員の合意に加えて実印と印鑑証明書がそろって初めて動きます。
相続人が遠方に住んでいる、疎遠になっている、そもそも連絡がつきにくい。それだけで手続きが何か月も止まることは、決して珍しくありません。
さらに厄介なのは、相続人のなかに認知症の方がいるケースや、未成年の方がいるケースです。こうした場合、後見人や特別代理人の選任が必要になり、手続きの時間も費用も大幅に増えます。
遺言書があれば、遺産分割協議そのものを省略できる場面が多くあります。「全員の合意を取り付ける」という最大のハードルを、あらかじめ取り除いておけるわけです。
遺言書がないと、話し合いの妥協案として「兄弟で持分を半分ずつ」といった共有名義に落ち着くケースがよくあります。その場ではうまくまとまったように見えますが、共有にした不動産は、時間が経つほど厄介になります。
まず、売りたい人がいても全員の同意がなければ売却できません。建て替えや大規模修繕、担保設定にも原則として共有者全員の同意が必要です。そして次の相続(いわゆる二次相続)が発生すると共有者がさらに増え、話はいっそうまとまらなくなります。
だからこそ、不動産がある場合は「誰がどの不動産を単独で取得するか」を遺言で決めておくのが基本です。これだけで、将来の家族が直面する問題を大幅に減らすことができます。
遺言書には大きく3つの方式があります。それぞれの特徴を、実務の感覚でまとめました。
すぐ作れる。費用はほぼゼロ
形式ミスで無効になるリスクあり。紛失・改ざんの恐れ。原則として家庭裁判所の「検認」が必要
紛失・改ざんリスクが激減。検認も不要になる
本人が法務局に出向く必要あり。内容の良し悪しまではチェックされない
無効リスクが最も低い。原本は公証役場が保管。検認も不要
費用と準備(証人2名など)が必要
自筆証書遺言は手軽に作れる反面、形式要件を一つでも外すと無効になるという厳しさがあります。「書けば有効」ではない、という点をまず押さえてください。
| 要件 | 注意点 |
|---|---|
| 本文の自書(手書き) | パソコン作成は原則不可。本文は必ず手書きで |
| 日付の記載 | 年月日を特定できる形で。「令和◯年◯月吉日」は無効になり得ます |
| 氏名の自書 | 戸籍上の氏名を手書きで |
| 押印 | 認印でも有効ですが、実印が望ましいとされています |
2019年の法改正で、財産目録に限ってはパソコン作成や通帳コピーの添付が認められました。ただし、目録の各ページに署名・押印が必要です。「目録だけパソコンでいい」という情報だけが広まって、署名・押印の条件が抜け落ちているケースを見かけますので、ここは注意が必要です。
自筆証書遺言には「紛失するかもしれない」「改ざんされるかもしれない」「相続後に検認手続きが必要」という3つの弱点があります。これをまとめて解消できるのが、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」です。自筆で作るなら、この制度の利用を強くおすすめします。
法務局が原本と画像データの両方で長期保管します。保管期間は原本が死亡後50年、画像データが死亡後150年です。家庭裁判所の検認が不要になるため、相続が始まったあとの手続きが早く動きます。
相続人の誰かが閲覧や証明書交付を受けると、他の相続人にも通知が届く仕組みもあります。さらに2023年10月からは、「自分が亡くなったら通知してほしい人」を最大3名まで指定できるようになっています。
法務局が確認するのは、あくまで形式要件(自書か、日付はあるか、など)です。遺言の「内容」が適切かどうかまでは見てくれません。
たとえば「不動産の書き方が曖昧で、いざ相続登記をしようとしたら受け付けてもらえなかった」という失敗は普通に起こります。形式はクリアしていても中身に問題がある、というのが一番怖いパターンです。
手数料は遺言書1通あたり3,900円です。本人が法務局へ出向いて申請する必要があり、代理申請はできません。住民票(本籍・筆頭者入り)などの本人確認書類と申請書を持参します。
不動産相続の現場を数多く見てきた実感として、"確実に通したい"なら公正証書遺言が一番安全です。費用はかかりますが、その分だけ家族の負担が確実に減ります。
公証人が作成に関与するため、形式ミスで無効になるリスクが非常に低い。原本は公証役場が保管するので、紛失・改ざんの心配がほぼない。検認も不要なので、相続が始まったらすぐに手続きを進められます。
自筆証書遺言との最大の違いは、「内容面のチェックも入る」という点です。公証人は法律の専門家ですから、不動産の書き方が曖昧だったり、実現が難しい内容だったりすれば、作成段階で指摘が入ります。これが、後になって「この遺言書では手続きできません」と言われるリスクを大きく下げてくれます。
公証人手数料は法令で算定ルールが決まっており、財産の価額に応じて段階的に計算されます。財産額が大きいほど手数料も上がりますが、目安としては数万円〜十数万円程度が多いです。公証人の出張が必要な場合(入院中など)は加算があります。
2025年10月1日から、公正証書の作成手続でデジタル化が始まっています。Web会議を利用した作成が順次可能になってきていますので、「公証役場に行けないから無理」と決めつけず、まずは公証役場か専門家に確認してみることをおすすめします。
ここは司法書士として特に強調したい部分です。不動産は、遺言書の書き方が甘いと名義変更(相続登記)の段階で手続きが止まります。せっかく遺言書を作ったのに使えない、という事態は、残された家族にとって非常につらいものです。
「東京都◯◯区の自宅を妻に」――こう書きたくなる気持ちはわかりますが、これでは物件を特定できず、登記で困ることがあります。必ず登記事項証明書を法務局で取り寄せて、土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積を、記載どおりに転記してください。
「長男と次男で2分の1ずつ」は、将来の売却や建て替えで行き詰まりやすい形です。基本は単独取得とし、不公平感がある場合は次の③で調整します。
不動産を一人に渡すと、他の相続人との間に金額的な差が出ます。そこで有効なのが、不動産と預貯金を別々の相続人に振り分ける方法です。たとえば「長男には自宅不動産を相続させ、次男には預貯金を多めに相続させる」という形で遺言を書いておけば、共有を避けつつバランスを取りやすくなります。財産全体を見渡して、誰に何を渡すかをセットで考えておくのがポイントです。
アパートや駐車場は、所有者が変わった瞬間から家賃の入金、修繕対応、入居者とのやり取りが始まります。誰が管理するか、収益をどう分けるかまで決めておかないと、相続直後の現場が混乱します。
農地については、農地法上の許可や届出が必要になる場合があるため、早めに専門家と設計しておくのが安全です。
遺言書は「書いて終わり」ではありません。預貯金の解約、各相続人への分配、不動産の名義変更――こうした実務を実際に動かす人が必要です。それが遺言執行者です。
遺言書に書かれた内容を実現するには、金融機関での手続きや法務局への登記申請など、具体的な作業が発生します。遺言執行者を指定しておけば、その人が各手続きの窓口になれるため、相続人全員の協力が得にくい場面でも手続きを進めやすくなります。
相続人のうちの一人を指定することもできますが、不動産や金融機関の手続きが多い場合は、司法書士や弁護士などの専門家を指定するのも現実的な選択肢です。手続きの確実性とスピードが上がります。
金融機関によっては、遺言執行者がいる場合は相続人全員の署名や実印を求めないケースがあります。相続人の誰かが非協力的な場合でも手続きが止まりにくくなるのは、大きなメリットです。
2024年4月から相続登記は義務化されており、不動産を取得したと知った日から3年以内に登記を済ませる必要があります。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料の対象にもなり得ます。
この相続登記の手続きが、遺言書の有無でどう変わるかを整理します。
被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえます。兄弟姉妹相続や代襲相続が絡むと通数がかなり増え、集めるだけで数週間〜数か月かかることも。
相続人全員で話し合い、全員の合意を書面にまとめます。全員の実印と印鑑証明書が必要です。一人でも連絡がつかない、合意しない場合は手続きが止まります。
遺産分割協議書と各種書類をそろえて法務局に申請します。
自宅保管の自筆証書遺言なら検認が必要です。法務局保管や公正証書遺言であれば、検認は不要でそのまま使えます。
遺言書と必要書類をそろえて法務局に申請。遺産分割協議が不要なぶん、必要書類が少なく、手続きがシンプルになります。相続人全員の実印や印鑑証明書も原則として不要です。
遺産分割協議そのものを省略できるため、相続人全員の合意取り付け、全員分の実印・印鑑証明書の手配、協議書の作成――この3つの手間がまるごとなくなります。相続人が多いケースや、遠方・疎遠のケースでは、この差が非常に大きくなります。
遺言書があっても、不動産の表示が曖昧だったり登記簿と食い違っていたりすると、法務局で受け付けてもらえません。せっかくの遺言書が無駄になってしまう――この落とし穴を避けるために、7章の書き方のポイントは必ずご確認ください。